景色をきいてみる 上野原
2024.02.25

『景色をきいてみる 上野原』 
 
山梨県上野原市のブランドメッセージ
「まだ、知らないだけ。」
をテーマにワークショップ形式で映像を作成しました。
この取組みは、同市による地域活性化プロジェクトの第一弾として位置付けられています。

完成動画はこちら

logueメンバーも映像づくりに参加しています。


―ワークショップ概要―
音楽編:2023年9月30日 映像編:2023年10月8日
会 場:障害福祉サービス事業所 logue/ローグ
・上野原のまちを歩き、日常に流れる音や映像素材を集めて1つの作品にする
・レコーディング機材は参加者のスマートフォン
※映像撮影はemulsion lens(立石剛:2021)を用いる
 
企画:立石剛(音楽家/現代アーティスト)
主催:logue/bookmark実行委員会
 

―ワークショップに寄せて―

「言葉で表現できなくなったとき音楽がはじまる」
ドビュッシーのこの言葉が好きだ。

意図のあるものは言語的である。

今私がいる部屋(空間)には様々な物が置いてある。
それらの殆どは意味や用途のある物が意図的に集まっている。
「見えてるもの」と「見えてないもの」を「ルビンの壺」のように反転させて考えてみる。
その空間から「意図」というものが消滅し、見えていなかった(意識していなかった)「それ以外」が現れる。
空間というのは、これらの「意図」と「それ以外」によって成り立っている。
そして、実はその殆どが「それ以外」の部分である。

その場所の持つ空気感や雰囲気というのは、普段見えていないもの、意図的ではないもの、そういった言葉にしづらいものが少なからず作っているのではないかと考えている。

その視点を拡げていくと、空間のみならず街や国、あるいは人などもそうなのではないかと思える。

そんな事を“意図”しながら今回のワークショップを考えてみた。
意図は言語的である反面、そこから離れるためにも有用なのである。

「まだ、知らないだけ。」の上野原が、参加された皆様によって「音楽」となってはじまる。

立石剛(音楽家/現代アーティスト)

― ― ―

「まだ、知らないだけ。」
このブランドメッセージから
市外の人がまちの魅力を知ること、市内の人がまだ知らないまちの表情を再発見すること、その両方を含みながら、内と外の境界線がゆらいでいくような未来が浮かんできました。
 
世界に溢れているカラフルでインパクトのある出来事に
つい我々の心は奪われがちですが
日常の中に流れている音や景色の中にこそ、そのまちを構成する大切な要素があるはず。
目と耳を丁寧に使い、考えることで
向き合う人との関わりが柔らかくなるようなきっかけにしたい。
そう考えながらワークショップを開催しました。
 
参加者は二日間にわたり上野原のまちを歩き、なんだか心が動く音や風景を集めました。
完成した映像作品には、フィールドレコーディングした素材に加え、お祭りや花火など上野原の「象徴的な音」、鈴やワイングラスなど身近なものを楽器にして参加者同士で即興演奏した音も含まれています。
目を閉じることで、さらに違う見え方やきこえ方を体感できることでしょう。
 
人の息遣いや虫の鳴き声、言葉にならない言葉がまちをつくっている。
上野原に散りばめられた生活のかけらに思いを馳せることで、まだ知らないだけの上野原を表現してみたい。
そんな願いをこめたプロジェクトです。
 
ここにあるすべての音は上野原で鳴り、
ここにあるすべての風景が上野原で流れていました。

井上真吾(logue)